髪は女の命

 

おはようございます。

 

僕の親戚には、心の病気が原因で引きこもりになった女性がいました。

 

彼女は学生時代の人間関係がうまくいかなくなり、学校を卒業した後も

 

就職をしないで、家に引きこもっていました。

 

彼女は外の世界との繋がりを断つことで自分を守ろうとしていました。

 

引きこもりと言っても、家の外に出ないだけで、普段は普通に家族と

 

一緒に食事をしていたようです。

 

彼女の両親はとても心配し、彼女がなんとか社会に出て働くようにと、

 

いつも厳しい言葉をかけていたようです。

 

両親は、彼女が働くのが嫌で怠けていると思ったのかもしれません。

 

しかし、彼女はみんなと同じように働きたいのに、それができない自分を

 

情けなく思っていたようです。

 

ある時、彼女はテレビのお笑い番組を見て笑うことがありました。

 

それを聞いていた父親が、「仕事もしないでテレビを見て笑うなんて、

 

何を考えているんだ」と彼女を怒ったそうです。

 

彼女にとってはテレビのお笑い番組を見て笑うことが唯一の

 

気晴らしの時間でした。

 

しかし、それが許されない彼女は自分の部屋に戻り、泣き続けたようです。

 

彼女は学生時代から髪がとてもきれいで、それが彼女の魅力でした。

 

彼女は髪を大切にし、定期的なお手入れを欠かさなかったようです。

 

しかし、引きこもりになってからは髪を切ることをやめました。

 

その結果、髪の毛は伸びて腰のあたりまで届くようになりました。

 

鏡に映る長い髪を見て、彼女は癒されることができ、それだけが

 

彼女の心の支えとなっていたようです。

 

そんな彼女は、子供の頃から親戚付き合いが長く、僕を頼りになる

 

お兄ちゃんのように慕っていました。

 

彼女には他に相談できる相手がいないようで、彼女は自分の悩みを

 

僕に打ち明けました。

 

悩みを聞いて、彼女がとても苦しんでいることがよくわかりました。

 

何とか力になってあげようと思いましたが、その時、僕はどうして

 

いいのかわかりませんでした。

 

当時、僕は老人ホームで働いていて、そこには気が合って

 

よくお話をしている優しい女性の入居者さんがいました。

 

僕はその入居者さんに引きこもりで苦しんでいる彼女のことを

 

話してみました。

 

彼女がとても髪を大切にしていることも話しました。

 

すると、その入居者さんは「髪は女の命、でも、長すぎるともつれて

 

しまうのよ。私が若い頃、心の悩みで苦しんでいた時、その長い髪を

 

思い切って短くしたら心のもつれがとけてすっきりしたの」

 

と教えてくれました。

 

長い髪を切ることで新たな気持ちが生まれたようでした。

 

僕はそのことを彼女に伝えて、その長い髪をバッサリと切り落して

 

みてはどうかと提案しました。

 

しかし、彼女は「それだけは死んでも嫌」と言って受け入れませんでした。

 

僕が彼女のことを親身になって心配していたのに、彼女の言葉に

 

怒りを感じました。

 

僕は彼女に、「その髪を切るだけの勇気がなければ、今の悩みは解決

 

できないよ」と強い口調で言いました。

 

少し間をおいて、説得するようにゆっくりと「死ぬほど悩んでいるのなら、

 

死んだつもりで髪を切ったらどう?」と続けました。

 

彼女はうつむいて涙を流しているのがわかりました。

 

彼女は、僕の気持ちを理解したのか、しばらくして、断腸の思いで

 

髪を切りました。

 

髪は女の命です。

 

彼女にはもう失うものは何もありませんでした。

 

それから、彼女の気持ちは大きく変化したようです。

 

彼女は笑顔が戻り、その表情は生き生きとして輝きました。

 

おしゃれも楽しめる気持ちになりました。

 

僕は少し言い過ぎたかと反省しましたが、反面、彼女の勇気に拍手を

 

送りたいとも思いました。

 

彼女は積極的になり、少しずつですが外に出て働くようになりました。

 

保険の外交員となった彼女に、僕はお祝いに最初の契約者となってあげました。

 

その時の彼女の嬉しそうな顔は忘れられません。

 

彼女にとって長い髪は、自分を縛りつけていたのかもしれませんね。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

身なりは大切ですね

 

おはようございます。

 

僕は服装には無頓着なので、洋服はサイズが合って着心地がよければ

 

それで十分です。

 

なので、僕は洋服にお金をかけません。安い洋服でいいのです。

 

生活費に余裕がないからそうなるのかもしれませんね。

 

でも、何故か僕はふたつの銀行口座を持っているんです。

 

ひとつはメガバンク、もうひとつは地方銀行です。

 

なので、お休みの日に買い物に行ったついでに、口座はまとめたほうが

 

いいと思い、あまり使ってないメガバンクの口座の解約手続きに行きました。

 

その銀行は駐車場が狭く、車の出し入れが難しいので、僕は買い物をした

 

百貨店に車を駐車したまま、5分ほど歩いて銀行に行きました。

 

その口座は預金用として使っていたので、引き落としはありませんでしたが、

 

いつも使う地方銀行の口座よりも残高が多かったんです。

 

多いといってもわずかな金額です。

 

口座の残高を確認したところ、千円未満の金額が550円でした。

 

キャッシュカードで千円単位を全部引き出して、残りはあきらめて、

 

預金通帳と一緒に放棄すれば、面倒な解約手続をしなくても

 

よかったのですが、550円あればお弁当が買えます。

 

僕はお弁当を買うために口座の解約をすることにしました。

 

窓口で口座の解約を申し出ると、1枚の解約用紙を渡され、日付と

 

口座番号と名前を書き、印鑑を押してそれを窓口に出しました。

 

しばらく座って待っていると、銀行員さんが僕のそばにやってきて、

 

顔写真の付いた身分証明書を見せてほしいと言いました。

 

きっと安っぽい服装の僕の姿を見て、怪しいと思ったのでしょうね。

 

さすがメガバンク、周りの人はきちんとした服装の人ばかりでした。

 

僕は近くの百貨店の駐車場に車を停めているので、車の中にある

 

免許証を持って戻って来ると、往復で10分以上かかることを説明しました。

 

そして、「印鑑と通帳があっても解約できないんですか?」と尋ねると、

 

解約の場合は証明書が必要だと言って、応じてくれませんでした。

 

僕は信用してもらえないので、とても悔しく思いました。

 

仕方がないので、買い物をした百貨店まで行き、急いで免許証を

 

持って再びその銀行に戻りました。

 

その時刻は14時55分でした。

 

僕が待っている間に15時になり、お店のシャッターが閉まり、

 

残ったお客は僕ひとりでした。

 

静かな店内では銀行員さんたちが黙々と仕事をしていました。

 

僕は閉店後の銀行の中を見るのは初めてで、営業中とはまったく違った

 

雰囲気が漂っていました。

 

証明書を求められた僕は、何か悪いことをして捕まえられた

 

ような気持ちになりました。

 

もしかしたら、僕は拾ったバッグの中の通帳と印鑑を持って

 

預金を引き出しに来た悪人と思われたのかもしれません。

 

なかなか手続きが終わらず、不安が増すばかりでした。

 

ひとりで待つ僕は落ち着かず、ソワソワして早く外に出たいと思いました。

 

やっとのことで解約手続きを終え、銀行員さんに案内され、非常口のような

 

ところから外に出ました。

 

外に出ると解放されたような気分でした。

 

僕はその時、千円単位のお金はキャッシュカードだけで引き出せるのに、

 

通帳と印鑑があっても全額を引き出すためには証明書が必要とは

 

不思議に思いました。

 

ATMは人を見て判断しませんが、銀行員さんは僕を見て不審に

 

思ったのでしょう。

 

僕は帰る途中コンビニに寄り、引き出したお金でお弁当を買って

 

家で食べました。

 

食べ終わった後、鏡で僕の姿をじっくり見ました。

 

情けない姿です、僕は銀行には550円の信用もないようです。

 

以前、先輩が「お前は中身がないんだから、服装だけはきちんとしなさい」

 

と僕を叱ったのを思い出しました。

 

やはり身なりは大切ですね。

 

今度ボーナスが出たら、少し見栄えのいい洋服を買うことにします。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

母と息子の愛

 

おはようございます。

 

僕が介護の仕事をしていた時のことです。

 

ある日、僕が働く老人ホームに、利用者としてひとりの女性が

 

息子さんに連れられて入ってきました。

 

彼女の表情は暗く、落ち込んでいるのがわかりました。

 

彼女は物静かで謙虚な性格でした。

 

僕は彼女に「困ったことがあったら、どんなことでも気軽に声を

 

かけてくださいね」と言いましたが、黙って頷くだけでした。

 

入居して1週間が経ちましたが、彼女の様子は変わりませんでした。

 

彼女が新しい環境に慣れないのは、何か心に問題があるのではないか

 

と思いました。

 

話を聞いてあげるだけでも気持ちが晴れることがあります。

 

僕はお世話をしながら、少しずつ彼女とお話をするようにしました。

 

彼女が話すことは、記憶が曖昧なのか話が断片的であり、話すたびに

 

違うこともありました。

 

なので、分かりやすく心で翻訳して、僕のブログ風に書いてみました。

 

彼女がここに来る前は、息子さんとふたり暮らしでした。

 

彼女はご主人に先立たれ、一生懸命に息子さんを育て上げたそうです。

 

彼女は生きることの辛さに何度も涙を流したそうです。

 

やがて、息子さんは学校を卒業し、不動産会社で正社員として働いて

 

いたようです。

 

その頃、彼女はそれまでの無理がたたり、病院通いが日課となっていました。

 

そして5年ほど前から、彼女は自分の体を自由に動かせなくなったそうです。

 

彼女はベッドと車いすの生活になりました。

 

食事の支度も、トイレに行くことも何もかもできなくなったそうです。

 

そのため、独身だった彼は、彼女の介護のために正社員の仕事を辞めて、

 

短時間のアルバイトになったそうです。

 

ここからふたりの会話です。

 

母:「いつも面倒かけてごめんなさいね。自分のことは自分でしたい、本当に。

 

あなたは私のために正社員の仕事を捨てたのね。辛いでしょう、

 

少ないけど私の年金を生活の足しにしてね。」

 

息子:「心配しないで、今までたくさん貯金をしてきたから大丈夫。」

 

母:「私はもう、感動もなく、生きる喜びさえ忘れてしまいました。

 

私は何もできない、役にも立たない、ただ生きているだけ。私は世の中に

 

必要とされていないのでしょうね。」

 

息子:「あなたは女手ひとつで僕を育ててくれた大切な人。僕はお母さんの

 

苦労をよく知っています。感謝しても感謝しても感謝しきれません。」

 

母:「あなたも自由がほしいでしょう。私を老人ホームに入れて、思う存分

 

自分の人生を楽しんでほしい。」

 

息子:「僕はあなたの溢れんばかりの愛情で大切に育てられました。

 

そんなお母さんを見捨てられません。」

 

ふたりは深い愛情で結ばれていたようです。

 

しかし、その後、息子さんは長くて過酷な状況に耐えきれず、

 

息子:「ごめんなさい、僕は身も心もボロボロです。お母さんの面倒を

 

みることはもう無理です。このままではふたりは共倒れになります。

 

こんな頼りにならない息子でごめんなさい。」

 

母:「いいのよ、今まで私のお世話をしてくれたあなたに感謝しています。」

 

息子:「近くに老人ホームがあるので入ってもらいます。本当にごめんなさい。」

 

母:「わかりました、これでいいのよ。」

 

ここまで彼女の心を翻訳しました。

 

僕はこの話を聞いて、息子さんの決断は正しかったと思います。

 

彼の介護は限界を迎えていたようです。

 

あのまま彼が母親の介護を続けていたらどんな結果になったでしょうか。

 

その後、彼は新しい仕事を見つけ正社員として働いています。

 

最初は仕事に慣れなかった彼も、次第に仕事に馴染み、休みの日には

 

いつも面会に来て、彼女と話をするようになりました。

 

彼女は息子さんに対する心配はなくなり、すっかりここの生活に

 

慣れました。

 

彼女には笑顔が戻りました。

 

すべてをひとりで抱え込むのではなく、老人ホームをうまく利用することで

 

幸せになれるんですね。

 

そのとき、僕は介護の仕事が世の中の役に立つことを改めて感じました。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます

中高年の価値

 

おはようございます。

 

僕がスーパーに転職したとき、仕事ができて尊敬できる先輩がいました。

 

彼は同じお店で働く先輩で、年齢は30代後半でした。

 

彼からお肉に関する多くの知識を学びました。

 

彼はその後、その豊富な知識とスキルが評価され、お肉の

 

バイヤーとなりました。

 

彼は新たな仕入れ先を開拓し、その能力を最大限に活かしました。

 

彼が仕入れるお肉はコストが抑えられつつも肉質も良く、お客さんから

 

高く評価されました。

 

仕入れ先は彼の大胆な仕入れを評価し、その能力を称えました。

 

時には、仕入れ先からの手厚い接待もあったようで、バイヤーとしての

 

存在価値を自負し、その充実感に浸っていたようです。

 

その頃、精肉部門の売り上げは順調に伸び、利益も上向いていました。

 

彼のバイヤーとしての能力は会社からも高く評価され、

 

その評価にとても満足していたようです。

 

でも、そんないいことは長く続きませんでした。

 

ある日、彼は僕のお店に来て、売場に並ぶお肉を眺めながら

 

「もうすぐこの会社とはお別れになる」と寂しそうに言いました。

 

僕がどうしたのかと尋ねると、彼はもうすぐ会社を辞めるとのことでした。

 

僕は彼に、その理由が何なのかと尋ねました。

 

彼は、新しく着任した課長との相性が合わず、自分の能力を認めて

 

もらえないので、このままこの会社にとどまっても、将来が見えない

 

と感じたからだそうです。

 

その時、彼は40代前半でした。

 

僕が介護の仕事からスーパーに転職したときは、まだ20代後半だったので

 

何とか正社員で採用されました。

 

その頃、僕と同じように就職活動をしていた40代の男性から、

 

ハローワークでお話を聞くことがありました。

 

彼は再就職に苦戦していたようで、たくさんの履歴書を送っても

 

面接までたどり着くのが非常に困難のようでした。

 

彼のような年齢では、多くの困難を乗り越えて豊富な経験を持ち、

 

立派な人も多いはずですが、それがなかなか評価されていないのが現状でした。

 

やはり、同じ人間でも若い人と比べて、中高年は就職では不利なことが

 

多かったようです。

 

それを聞いていたので、僕は彼に少しくらいのことは我慢して

 

この会社にいたほうがいいとアドバイスしました。

 

すると、彼は「生意気なことを言うな、そのうちお前を見返して

 

やるからな」と意気込んでいました。

 

彼は自分にはやる気と能力があるから、きっとうまくいくと自信満々でした。

 

それから数か月が経ちました。

 

僕が売場で商品整理をしていると、誰かが僕の背中をたたきました。

 

お客さんが何か用事があるのかと思い、振り向きました。

 

驚きました。会社を辞めた元先輩が僕に声をかけてきたんです。

 

僕は店内でしばらく彼と立ち話をしました。

 

彼の就職活動は必ずしも順調ではなかったようです。

 

彼自身の老後の生活や子供の進学のことなどを考えると、思うような

 

条件の就職先がなかなか見つからなかったようです。

 

僕が言ったように、中高年の就職は難しいようです。

 

彼は、誰だって年を取っても働く権利はあるのに、中高年の価値を

 

見出せないのは企業にも責任があると言っていました。

 

年齢に関係なく、企業にとって必要な人材はたくさんいるとも言いました。

 

そう言いながらも、彼はあのときの僕の助言を聞いておけばよかった

 

と後悔していました。

 

今更そんなことを言っても後の祭りでした。

 

最終的に、彼は僕の会社の仕入れ先である精肉業者で働くことになりました。

 

それは、彼の経験と能力が買われたのではなく、うちの会社との円滑な

 

取引のための仲介役として雇われたようです。

 

彼は営業で僕のお店に来ますが、立場が逆転して初めて、

 

ここの会社にいた時の彼の成功は会社の看板のお陰だったという

 

ことを理解したようです。

 

自分の力を過信した悲劇でした。

 

今では、僕に謙虚な姿勢で接しています。

 

中高年にとっての労働市場は実に過酷であると改めて僕は感じました。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

何の賞味期限?

 

おはようございます。

 

僕が働くスーパーの食品売り場の商品には、それぞれ賞味期限があります。

 

短いものでは、お刺身のように当日限りのものもあれば、長いものでは

 

缶詰のように数年間保存できるものもあります。

 

特に賞味期限が長い商品は鮮度チェックの際、うっかり賞味期限を見落とし、

 

お客さんからクレームの電話がかかることがあります。

 

すぐにお客さん宅を訪問し、健康に影響がないか確認し、適切な対応を取ります。

 

食べて食中毒にでもなったら大変です。

 

売場に賞味期限切れの商品が並ぶことは絶対許されません。

 

話は変わりますが、僕のお店には商品管理部という部署があり、

 

入荷商品の荷受けや返品処理などの業務を担当しています。

 

そこには入社してから30年以上の経験を積んだベテラン女子社員がいます。

 

噂では彼女が若い頃、美人で、男子社員からモテモテだったそうです。

 

当初は青果売り場を担当したようですが、その美しさに男子社員から

 

ちやほやされ、売り場では輝いていたようです。

 

その後、彼女は同じお店の男性と結婚しましたが、わがままな彼女は

 

夫と関係がうまくいかず、わずか1年で離婚したそうです。

 

彼女はその後も正社員として働きましたが、仕事に対する真剣さが

 

欠けていたため、レジ部門に異動となりました。

 

しかし、彼女は接客態度が悪く、お客さんとのトラブルが絶えず、

 

売り場でお客さんに対応する仕事は適していなかったようです。

 

そして今では、売場に出ることがあまりない商品管理部で働いています。

 

彼女はお局さんとも言える存在でしょうか、お店では一番勤続年数が長く

 

店長よりも5年も長いのです。

 

彼女はお店では大将です。自分の仕事のスケジュールにみんなを合わせます。

 

若手の女子社員などは彼女に呼びつけられ、いつも叱られることがあり、

 

彼女がいる時はなるだけ事務所に立ち寄らないようにしています。

 

伝票の締め日には、売り場が忙しくても午前中に伝票チェックを

 

するように、各部門に指示します。

 

いつもは売場が落ち着いて午後から伝票チェックをする売場担当者は、

 

その指示に疑問を持ちますが、誰も逆らえません。

 

しかし、店長には手のひら返しで笑顔で誠実そうに対応します。

 

そのため、店長からの評価は悪くはありませんでした。

 

その日の夕方、僕が事務所で仕事をしていると、彼女は仕事が早く

 

終わったのでしょうか、同僚と無駄話をしていました。

 

そして、時間が来るとさっさと退社しました。

 

彼女の自己中心的な仕事ぶりには腹が立ちました。

 

僕は、彼女は社員としての賞味期限はとっくに切れていると感じました。

 

それを彼女に自覚してもらわなければなりません。

 

それから数日後、僕は家から賞味期限が3日過ぎたチョコレートを

 

持って会社に行きました。

 

彼女が一時的に事務所を出ている隙に、僕はチョコレートと一緒に

 

メモを添えて彼女の机に置きました。

 

そのメモには「いつもお疲れ様です。賞味期限は切れていますが、

 

あなたに喜んでもらうようにチョコレートを用意しました。

 

もしよろしければ食べてください」と書きました。

 

すぐに彼女は戻ってきました。

 

そのとき、彼女は「このチョコレートはあなたがくれたの?」と

 

僕に尋ねましたが、知らないふりをしました。

 

そして彼女はメモを読みました。

 

僕は彼女がどんな顔をするのか楽しみでした。

 

驚くことに、彼女は「チョコレートなら3日くらい賞味期限が

 

過ぎても大丈夫ね」と言って美味しそうに全部食べました。

 

その瞬間、僕は彼女が社員としての賞味期限は切れたかもしれないけれど

 

お局さんとしての賞味期限はまだまだ切れていないんだと悟りました。

 

賞味期限切れのチョコレートを食べた彼女はますます猛威を振るい、

 

僕たちを悩ませています。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

もつ鍋風味のブログ

 

おはようございます。

 

食欲の秋ですね、僕のお店にも秋の味覚が勢ぞろいしています。

 

青果売り場では松茸、柿、サツマイモなどが、鮮魚売り場ではサンマや

 

牡蠣などが並び、店内は秋の香りに包まれています。

 

お肉の売場も、焼肉やバーベキューなどの夏の売場から、

 

すき焼きやしゃぶしゃぶなどの秋冬の売場に変わりました。

 

我が家の食卓もこれから鍋物が増えます。

 

毎日、和牛の霜降り肉をすき焼きやしゃぶしゃぶ用に切っていますが、

 

正直、僕の給料ではこんな高級なお肉は食べられません。

 

家でたまに作るすき焼きは、牛こま切れ肉を使っています。

 

本当のすき焼き肉の味を知らない娘は、僕が作るすき焼きは

 

美味しいといつも言ってくれます。

 

いいんです、美味しければ。

 

しゃぶしゃぶは豚肉を使っています。

 

さすがに、こま切れ肉は食べにくいので肩ロース肉を使います。

 

野菜がたっぷりのしゃぶしゃぶです。

 

牛肉ではなく豚肉を使ったしゃぶしゃぶを美味しいと言う娘は、

 

本当にやさしい子です。

 

でも、そのうち僕は立派な父親になって、娘に美味しいお肉を

 

たくさん食べさせてあげるのが夢です。

 

すき焼きやしゃぶしゃぶも好きですが、もっと好きなのがもつ鍋です。

 

お酒を飲みながら、鍋を囲んで家族や友人と楽しいひと時を過ごすのは、

 

とても幸せを感じます。

 

味噌味のダシにホルモン、ニラ、白菜、豆腐、こんにゃくを加え、

 

ぐつぐつと煮込みます。

 

煮立つと、味噌とダシのいい香りは食欲をかき立てます。

 

寒い日には日本酒を熱燗にして鍋を食べると、冷え切った体が

 

生き返ったように温かくなります。

 

たまりにたまった今までのストレスや疲れが鍋の熱さで

 

とけてしまいそうです。

 

手作りのもつ鍋は僕の人生に元気を与えてくれます。

 

ところで話は変わりますが、僕はもつ鍋を作るような気持ちで

 

いつもブログを書いています。

 

まず、安心してもつ鍋を食べてもらうためにキッチン周りを

 

清潔にするように、ブログを書く前に心を清らかにします。

 

さて、それが終わったら、鍋に具材を入れるように、ブログには

 

悲しさ・嬉しさ・楽しさ・寂しさ・驚き・怒りなどの感情を入れます。

 

もつ鍋に整然と鍋に並べられた具材のように、見た目も大切です。

 

ブログでは読みやすいように行間を整えて書きましょう。

 

もつ鍋のように旨味を引き立たせるためには微妙な心のダシの

 

さじ加減が大切です。

 

より深い味わいにするには人生経験というダシを入れましょう。

 

僕の大好きな人情味を加えると、さらに美味しくなります。

 

具材の煮崩れがないように、今感じている心の中をありのままに書きます。

 

心を込めて作ったもつ鍋は読者の五臓六腑に染みわたります。

 

でも、すべての人が美味しいと感じるもつ鍋はできません。

 

たった一人でもいいんです、僕の作ったもつ鍋の美味しさ温かさに

 

共感して、喜びや悲しみの涙を流してくれれば嬉しいです。

 

アツアツで美味しいもつ鍋は心が感動して熱くなったのと同じです。

 

心が冷めないうちに書きましょう。

 

出来上がったもつ鍋の美味しさや熱さを伝えるのがブログの醍醐味です。

 

きれいな写真や動画で表現し、文章で補完すればいいのですが、

 

僕は文章のみで表現することで、目ではなく心にそれを伝えます。

 

もつ鍋の熱さで火傷をしないための取り皿のように、ブログでは

 

読者さんへのやさしさと気遣いが必要です。

 

そして、忘れてはいけませんね、具材の美味しさを引き出す最後の

 

決め手は、食べることで幸せを感じる、愛という魔法の調味料です。

 

これで仕上げれば最高のもつ鍋の完成です。

 

あなたも一緒に食べていただけませんか?

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

最高のプレゼント

 

おはようございます。

 

今回は、僕が介護の仕事を辞め、スーパーの精肉部門に転職した頃のお話です。

 

お肉の仕事は、これまでの経験とはまったく異なる分野なので、

 

慣れるまでとても苦労したことを覚えています。

 

お肉の専門知識や技術は精肉部のリーダーから、スーパー業界に関する

 

知識や商品の販売技術などは副店長から学びました。

 

副店長はとても丁寧に教えてくれ、知識をどんどん吸収できました。

 

僕は新しい仕事に魅了され、業界の奥深さを感じました。

 

僕は仕事についての考え方やアプローチについて常に質問しましたが、

 

副店長も忙しく、なかなか十分な時間が取れませんでした。

 

そこで、副店長は「仕事が終わったら飲みながら話そう」と僕をよく

 

居酒屋さんに誘ってくれました。

 

お酒を交えた話は、普段仕事中には聞けないような社内上層部の人間関係や、

 

仕入れ先との程よい距離感の保ち方など、貴重な情報も教えてくれました。

 

彼の教育のお陰で成長したことは確かで、彼には深く感謝しています。

 

仕事に対する意欲と能力の高さから、彼は将来出世するだろうと思いました。

 

その後、僕の予想通り、彼の仕事ぶりが評価され、彼は別のお店の店長として

 

異動することになりました。

 

僕は、彼を祝福する言葉と一緒に、近くのコーヒー専門店で一番高い

 

コーヒーを買ってプレゼントしました。

 

彼は笑顔でそれを受け取って「お前も頑張れよ」と嬉しそうでした。

 

それから、彼は新たな環境で店長としてバリバリ働いていたようです。

 

ところが、数年後、彼は店長から副店長に降格されました。

 

その理由は、部長との対立が頻繁だったためでした。

 

でも、彼は自分の信念を曲げることなく、後悔していなかったようです。

 

彼は再度僕のいるお店に戻って来ることになりました。

 

その頃、僕のお店では店長が若返り、彼は年下の店長の指示のもとで

 

働くこととなりました。

 

悔しかったんでしょう、彼は年下の店長には絶対負けられないと思って

 

働き続けたようです。

 

真面目だった彼は、店長からのいじめと思われるような厳しい指示

 

にも耐え、根性で早朝から深夜まで、休みの日も働き続けました。

 

以前、彼は休みの日は健康のためにスポーツジムに通い、体を

 

鍛えていたようです。

 

でも、それをする余裕もなくなりました。

 

僕が時々彼に話しかけると「お前とゆっくり話がしたいのだが、仕事に

 

追われてすまない」と言って速足で立ち去って行く始末です。

 

傍から彼を見ていて、かわいそうになるほど余裕がない働きぶりでした。

 

そんな彼ですが、ある時、「少し話をしよう」と僕を誘いました。

 

僕はどうしたんだろうかと思いつつ、彼に誘われて食堂に行きました。

 

多くの従業員が帰った夜の食堂には誰もいませんでした。

 

彼の顔を見ると、疲れ切っており、顔色がひどく悪いと感じました。

 

彼が買ってきたコーヒーをふたりで飲みながら「お前からもらった

 

コーヒーは最高に美味しかったよ」と彼は懐かしそうでした。

 

続けて、「本当はもっと美味しいコーヒーをご馳走したいが、忙しくて

 

その余裕がない。その代りに、お前に私の心をプレゼントしたいんだ」

 

と真剣な表情で僕の顔を見ながら言いました。

 

僕はそれは何ですかと尋ねると、「信念を貫き、自分らしく生きること」

 

と言って僕の手を固く握りました。

 

今までの人生を振り返ったようで、彼の目には涙が浮かんでいました。

 

そのとき、僕は彼の手の温もりを感じました。

 

それから3日後のことです。

 

衝撃的な報告が届きました。

 

店長から朝礼で、副店長は昨日脳出血で亡くなったと伝えられました。

 

僕は突然の出来事に、それを聞いて信じられませんでした。

 

彼はあのとき、自分の命が持たないことを予知していたのかもしれません。

 

彼は身をもって僕に最後の教育をしてくれたのです。

 

僕は彼のように生きることはできませんが、今でもコーヒーを飲むとき、

 

彼の言った「自分らしく生きること」という言葉が最高のプレゼント

 

として脳裏によみがえります。

 

僕は決してあのときの彼の手の温もりを忘れることはないでしょう。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。