中高年の価値

 

おはようございます。

 

僕がスーパーに転職したとき、仕事ができて尊敬できる先輩がいました。

 

彼は同じお店で働く先輩で、年齢は30代後半でした。

 

彼からお肉に関する多くの知識を学びました。

 

彼はその後、その豊富な知識とスキルが評価され、お肉の

 

バイヤーとなりました。

 

彼は新たな仕入れ先を開拓し、その能力を最大限に活かしました。

 

彼が仕入れるお肉はコストが抑えられつつも肉質も良く、お客さんから

 

高く評価されました。

 

仕入れ先は彼の大胆な仕入れを評価し、その能力を称えました。

 

時には、仕入れ先からの手厚い接待もあったようで、バイヤーとしての

 

存在価値を自負し、その充実感に浸っていたようです。

 

その頃、精肉部門の売り上げは順調に伸び、利益も上向いていました。

 

彼のバイヤーとしての能力は会社からも高く評価され、

 

その評価にとても満足していたようです。

 

でも、そんないいことは長く続きませんでした。

 

ある日、彼は僕のお店に来て、売場に並ぶお肉を眺めながら

 

「もうすぐこの会社とはお別れになる」と寂しそうに言いました。

 

僕がどうしたのかと尋ねると、彼はもうすぐ会社を辞めるとのことでした。

 

僕は彼に、その理由が何なのかと尋ねました。

 

彼は、新しく着任した課長との相性が合わず、自分の能力を認めて

 

もらえないので、このままこの会社にとどまっても、将来が見えない

 

と感じたからだそうです。

 

その時、彼は40代前半でした。

 

僕が介護の仕事からスーパーに転職したときは、まだ20代後半だったので

 

何とか正社員で採用されました。

 

その頃、僕と同じように就職活動をしていた40代の男性から、

 

ハローワークでお話を聞くことがありました。

 

彼は再就職に苦戦していたようで、たくさんの履歴書を送っても

 

面接までたどり着くのが非常に困難のようでした。

 

彼のような年齢では、多くの困難を乗り越えて豊富な経験を持ち、

 

立派な人も多いはずですが、それがなかなか評価されていないのが現状でした。

 

やはり、同じ人間でも若い人と比べて、中高年は就職では不利なことが

 

多かったようです。

 

それを聞いていたので、僕は彼に少しくらいのことは我慢して

 

この会社にいたほうがいいとアドバイスしました。

 

すると、彼は「生意気なことを言うな、そのうちお前を見返して

 

やるからな」と意気込んでいました。

 

彼は自分にはやる気と能力があるから、きっとうまくいくと自信満々でした。

 

それから数か月が経ちました。

 

僕が売場で商品整理をしていると、誰かが僕の背中をたたきました。

 

お客さんが何か用事があるのかと思い、振り向きました。

 

驚きました。会社を辞めた元先輩が僕に声をかけてきたんです。

 

僕は店内でしばらく彼と立ち話をしました。

 

彼の就職活動は必ずしも順調ではなかったようです。

 

彼自身の老後の生活や子供の進学のことなどを考えると、思うような

 

条件の就職先がなかなか見つからなかったようです。

 

僕が言ったように、中高年の就職は難しいようです。

 

彼は、誰だって年を取っても働く権利はあるのに、中高年の価値を

 

見出せないのは企業にも責任があると言っていました。

 

年齢に関係なく、企業にとって必要な人材はたくさんいるとも言いました。

 

そう言いながらも、彼はあのときの僕の助言を聞いておけばよかった

 

と後悔していました。

 

今更そんなことを言っても後の祭りでした。

 

最終的に、彼は僕の会社の仕入れ先である精肉業者で働くことになりました。

 

それは、彼の経験と能力が買われたのではなく、うちの会社との円滑な

 

取引のための仲介役として雇われたようです。

 

彼は営業で僕のお店に来ますが、立場が逆転して初めて、

 

ここの会社にいた時の彼の成功は会社の看板のお陰だったという

 

ことを理解したようです。

 

自分の力を過信した悲劇でした。

 

今では、僕に謙虚な姿勢で接しています。

 

中高年にとっての労働市場は実に過酷であると改めて僕は感じました。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。