誠意とは何ですか?

 

おはようございます。

 

寒い日が続きますが、みなさんお元気ですか?

 

今回は心も寒くなるような過去の出来事です。

 

僕が仕事を終えて退社しようとしていた時、精肉部門にお客さんから

 

ある電話がかかりました。

 

その内容は、お客さんがお店で買ったすき焼き用のお肉のパックを

 

開けたところ、中に髪の毛が混じっていたというものでした。

 

僕はすぐに代りの商品とお詫びに、粗品のラップを持ってお客さんの

 

お家に向かいました。

 

既に日が暮れていて、お客さんのお家を見つけるのにはかなり

 

時間がかかりました。

 

玄関のドアを開けてもらうと、60歳くらいの男性が不愛想に立っていました。

 

そのお客さんは「電話してここに来るまでどれだけ時間がかかるんだ、

 

いつまで経ってもすき焼きが食べれないじゃないか」ととても機嫌を

 

損ねられていました。

 

僕はお詫びをし、代わりの商品とラップを渡して帰ろうとしましたが、

 

お客さんは「全然お詫びの気持ちが伝わってこない」と立腹し、

 

僕を引き止めました。

 

それを受け止めた僕は深々と頭を下げてお詫びしました。

 

しかし、その男性は「まったく誠意が感じられない」と言うんです。

 

「誠意とは何ですか?」と小さな声で尋ねると「そんなこと自分で考えろ」

 

けんもほろろでした。

 

そして、「出直してこい」と言われ、暗い気持ちでお客さん宅を出ました。

 

僕はその男性が言った誠意の意味が分かりませんでした。

 

お店に帰って、売り場にいた青果のリーダーに相談すると、

 

「そういう人には2万円くらい包んで持って行った方が

 

いいかもしれないよ」とアドバイスされました。

 

そんな事を言われても、毎月1万円のお小遣いしかもらっていない僕は、

 

2万円なんて大金出せるはずがありません。

 

預金残高を確認すると、そこには前日5千円振り込まれていました。

 

僕の親友に貸したお金が毎月5千円ずつ振り込まれるんです。

 

実はこれ、親友のお父さんのお葬式の際にお金が足りなくて、

 

僕が貸してあげたお金の返済でした。

 

僕の親友は非正規雇用でお金がなく、父親の葬式代が払えなかったのです。

 

それから彼は真面目に働き、「少しずつで申し訳ない」と言いながらも

 

月に5千円ずつでしたが毎月滞ることなく返し続けました。

 

僕は彼の生活を知っています。

 

月に5千円の返済がとても負担が大きいことを。

 

その時、僕は彼の姿勢にこれが誠意だと感じました。

 

翌日、お小遣いの範囲内でメロンを買って、再度お客さんのお家に行き、

 

「これが僕にできる精一杯の誠意です」と言ってメロンを渡し、

 

許してもらおうとしました。

 

するとお客さんは「誠意の意味を知っているのか、本当の誠意を見せろ」

 

と大声を発し、腹立たしい様子でした。

 

僕はその剣幕に怯え堪らず、土下座をしました。

 

しばらく無言の状態が続き、僕は不安でその時間がとても長く感じました。

 

しかし、お客さんは「まだまだ誠意は見られないが、今度から気をつけろ」

 

と言って僕を許してくれました。

 

彼は僕にこれ以上の誠意を求めても無駄だとわかったんでしょうね。

 

後から知ったことですが、その家はとてもお金持ちで、

 

金品が欲しいのではなく、僕の誠意の本気度を試したかったようです。

 

以前、このお客さんにクレーム対応した社員から聞きました。

 

彼は本当は僕に土下座など求めているのではなく、心からの

 

お詫びを求めているようでした。

 

最初に訪問した時の僕の態度と安易にメロンで許してもらおうとした

 

根性が気に入らなかったんでしょうね。

 

彼は人として道理にかなった対応を望んでいたようです。

 

それからはこのような場合、店長と一緒に謝ることにしました。

 

僕一人よりもそのほうが3倍くらい誠意が伝わるんです。

 

今思い出すと辛い瞬間でしたが、そのお客さんとの出会いに感謝しています。

 

こうして僕はお客さんによって成長し、教えられることがあるんだと

 

実感しました。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。