寂しいホワイトデー

 

おはようございます。

 

今日はホワイトデーですね。

 

僕のお店でもホワイトデーのコーナーは、きれいな飾り付けに

 

魅力的な品揃えで、お客さんの購買意欲を掻き立てています。

 

みなさんホワイトデーのお返しに、ハンカチに財布にポーチ、マシュマロに

 

クッキーにチョコなどを様々な想いでそれらを選んでいます。

 

バレンタインの女性のスマートな選び方に比べて、男性のそれは

 

なんとなく気おくれして恥ずかしそうにしている気がします。

 

不器用で愛の伝え方を知らないのでしょうか?

 

僕はそれを見ると男性って、実はとても繊細なような気がします。

 

話は変わりますが、僕が働いている精肉部門に、ホワイトデーには

 

まったく無関係な男性がいます。

 

彼は半年前から病気でずっと仕事を休んでいる社員の代わりに、

 

余剰人員だった他のお店から応援に来ています。

 

彼はこの会社に入社して20年になるようですが、いまだに独身で

 

仕事に真剣さが感じられません。

 

彼は自分の存在感を示したいのか、一緒に働くパートさんと仕事中

 

いつも無駄話ばかりしています。

 

そのためみんなの仕事が遅れてしまいます。

 

その仕事ぶりに一緒に働いているパートさんは呆れていました。

 

ある時彼は「隣の鮮魚部門は忙しそうだけど、俺がいるから精肉部門の

 

仕事は順調に進むんだよ」と誇らしそうに言いました。

 

するとひとりのパートさんが「鮮魚部門が忙しいと思うならどうぞ

 

あちらの応援をして下さい」と冷たく言いました。

 

その時彼は「こんなひどいことを言われて俺は悲しい」と嘆きました。

 

実は彼は、誰からも必要とされず寂しい想いをしていたのです。

 

そんな彼には誰もバレンタインにチョコをあげる人はいなかったので、

 

ホワイトデーのお返しはまったく必要がありませんでした。

 

彼は子どもの頃から母親と二人暮らしで、彼を一人前に育て上げるまでの

 

苦労する母親を見て育ったようです。

 

その母親も彼が働き始めて数年後に重い病気にかかり、その後遺症のため、

 

彼は母親の面倒をみることになったそうです。

 

彼は苦労して自分を育ててくれた母親を見捨てることができず、

 

母親の面倒をみるために結婚することはあきらめたようです。

 

でも、その母親も1年前に亡くなり、彼は今では誰にも必要とされないと

 

思うようになったようです。

 

本当なら、彼のような優しい男性はもっと幸せになっていいはずです。

 

僕はそんな彼を見てとてもかわいそうになりました。

 

その時僕は彼に「あなたがステーキを切ることは、お客さんが楽しく

 

食事をするために必要なこと、あなたが切ったステーキは食卓に幸せを

 

届けるんですよ」と慰めました。

 

彼はその時は何も言いませんでしたが、仕事が終わって帰る時

 

嬉しかったんでしょうね、いつも挨拶をしない彼が僕に近づき

 

ぽつんと「お疲れ様です」と言って帰りました。

 

人は誰からも必要とされないと思う時は、とても辛いことだと僕は思いました。

 

でも僕は、きっとそのうち、彼を必要とする人が現れると思います。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。