愛の裏には厳しさがある

 

おはようございます。

 

僕がゴールに向かって激走していたところに、味方からパスが飛んできました。

 

チャンスだと思った僕は、転がってきたボールを思い切ってゴールに

 

向けて蹴りました。

 

しかし、ボールは当たらず足の間を通り抜け、バランスを崩した僕は

 

後ろに転倒しました。

 

不運にも、体を支えようとした右手を骨折してしまいました。

 

これは僕が高校時代の体育の授業中、サッカーの試合中の出来事です。

 

すぐに病院に連れて行かれ、入院することになりました。

 

初めての入院でした。

 

けがの治療や慣れない入院生活に、僕はとても心細かったことを

 

今でも覚えています。

 

でも、その不安を和らげてくれる優しい看護師さんがいました。

 

彼女は僕の身体だけではなく心のケアもしてくれて、不安な入院生活が

 

とても幸せに感じるようになりました。

 

それ以来、まるで天使のような清純で優しい看護師さんに対する

 

憧れが生まれました。

 

そんな僕ですが、学校を卒業して老人ホームで働くことになりました。

 

それまで知らなかったのですが、老人ホームでは介護士さんだけではなく、

 

看護師さんも働いていることを知りました。

 

まさか、僕が憧れの看護師さんと一緒に働けるとは思ってもみませんでした。

 

あの愛とやさしさに溢れる看護師さんと一緒に働けるなんて、

 

まさに夢のようでした。

 

しかし、現実はそれほど甘くありませんでした。

 

一緒に働いてみると、看護師さんの仕事の厳しさに驚きました。

 

僕が頭に描いていたあの理想的な病院の看護師さんではありませんでした。

 

僕が入居者さんの入浴介助をしたとき、皮膚のただれに気づかなかったり、

 

入居者さんの体調不良に気づくのが遅くなってしまい、

 

厳しく叱責されることもありました。

 

「あなたは何のためにここで働いているの?」と何度も責められました。

 

その頃僕は、看護師さんの厳しい指導にとてもつらい気持ちで働いていました。

 

指導があまりにも厳しいので、あるとき僕は看護師さんに、自分が入院

 

していたときに出会った優しい看護師さんのことを話しました。

 

すると、彼女は「あなたは看護師の仕事がどんなものか全く理解して

 

いないのね」と怒りました。

 

叱られ続ける僕は悔しくて、何度も仕事を辞めようかと思いましたが、

 

負けてたまるかと思い、歯を食いしばって仕事を続けました。

 

そのうち、僕は仕事にも慣れ、周りの状況に目を向けるようになり、

 

現場で働く看護師さんが抱える仕事の重圧や責任に気づきました。

 

看護師さんは常に入居者さんの健康状態を監視し、常に緊急事態に備えていました。

 

僕は看護師さんが抱えるストレスや負担を理解することができました。

 

そんな看護師さんですが、僕には厳しくても入居者さんにはとても優しいのです。

 

あるとき、男性の入居者さんが食事中に食べ物をうまく飲み込めず、

 

気管に入ってしまいました。

 

高齢者の誤嚥は命にかかわることもあります。

 

看護師さんの献身的な看護によって彼は回復しましたが、その手厚い

 

看護とその男性への思いやりに僕は心を打たれました。

 

それを見て、僕は自分が入院していたときのことを思い出しました。

 

その優しさの裏には、仕事に対する厳しさがあることに気づきました。

 

まさに目から鱗が落ちる瞬間でした。

 

それ以来、ここにいる入居者さんにも、自分が入院していたときに感じた

 

あの愛を同じように感じてもらいたいと思うようになりました。

 

自分には厳しく、入居者さんには優しくするように心がけました。

 

愛の裏には厳しさがあることを教えてくれた看護師さんには、感謝しています。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。