幸せの意味

 

おはようございます。

 

僕が介護の仕事をしていたとき、家のローンの支払いを続けている

 

年の離れた先輩がいました。

 

家を買った当初は、最新設備が備わった自分の家が持てたことに満足し、

 

仕事が終わって家に帰るのが楽しかったそうです。

 

家族そろって食べる食事は何を食べても美味しく感じたそうです。

 

また、朝目覚めて窓を開けて見る外の景色は、とても新鮮に感じたそうです。

 

幸せとはこんなことだ、と彼は思ったそうです。

 

彼は頑張って働いて、必ずローンは完済しようと心に誓いました。

 

しかし、住宅ローンの長さは次第に彼の重荷になってきました。

 

臨時の出費などが重なることもあり、思った以上に生活が苦しく

 

なることもあったそうです。

 

また、仕事上の悩みも抱えるようになり、この先このままローンを

 

払い続けられるだろうか、と彼は不安に思い始めたようでした。

 

そのうち彼は、ローンの重みで心が押しつぶされそうになり、

 

追い詰められたような暗い気持ちになったそうです。

 

やがて彼は心の病気になり、病院で薬をもらって飲むようになったそうです。

 

彼はそのときの気持ちを僕に話しました。

 

朝早く目が覚め、横で寝ている妻と子供の無邪気な寝顔を見ながら、

 

もし、この家を手放すことになったらこのふたりはどんなに

 

悲しむだろうと思ったそうです。

 

そうなった時のことを思うと、ふたりの顔は悲しくて見ていられ

 

なかったそうです。

 

僕は彼の話を聞いて、とても悩んでいるのがわかりましたが、

 

僕にはどうしてあげることもできませんでした。

 

そのうち彼は考え込むようになり、仕事に集中できなくなりました。

 

そして彼は、仕事を欠勤するようになり、退職することになりました。

 

僕は気がかりでしたが、その後彼がどうなったか知りませんでした。

 

それから5年後のことです。

 

そのとき、僕はスーパーに転職していました。

 

僕が売場で商品補充をしていたとき、どこかで見たことのある顔の

 

お客さんがお弁当とお茶を持って歩いていました。

 

思い出しました、あの住宅ローンを抱えて苦しんでいた先輩です。

 

僕は彼に近寄り、「○○さんですね、僕を覚えていますか」と声をかけました。

 

彼は僕がここで働いているのに驚いたようでした。

 

僕は、「もし今からご飯を食べるなら、僕も一緒に食べるので

 

お話をしませんか?」と先輩を誘いました。

 

彼も久しぶりに僕と会ったので話をしたかったようでした。

 

ふたりは店内のイートインコーナーに行き、お弁当を食べながら話しました。

 

最初は僕が転職してここで働くようになったことについて話し、

 

その後、気になっていた彼のことを聞きました。

 

結局彼は、住宅ローンの支払いができなくなり家を売却し、今は

 

賃貸住宅に住んでいるようです。

 

あの頃、彼の苦しみに気付いた奥様は彼に、その理由を聞いたそうです。

 

奥様はあっさりと、「それならこの家を売りましょう」と言ったそうです。

 

子供さんも、「お父さんが元気になるのなら家なんてなくてもいい」と

 

賛成してくれたそうです。

 

そして、家のことより彼の健康の方が大切だと家を売ることになりました。

 

彼は自分の不甲斐なさと家族の優しい気持ちが重なって号泣したようです。

 

それから彼は今ではタクシーの運転手の仕事をしているようですが、

 

家はなくても今は心の病から解放されて幸せだそうです。

 

僕は目の前で話している彼の表情を見てそれがよくわかりました。

 

本当の幸せとは家を持つことではなく、楽しく家族と暮らせる環境

 

なのかもしれませんね。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。