愛のゆくえ
おはようございます。
僕が働いているお店には60代の男性がいますが、なぜかその人は、いつも
平和そうな顔をして仕事をしています。
彼はお菓子やお酒、調味料などの加工食品の品出しをしています。
彼はひとりで仕事をしながら、幸せの世界に没入していたようです。
僕が○○さんと声をかけると、驚いたように振り向きました。
実はこの男性、元ここの店長をしていた人で、定年後、引き続き
再雇用制度を利用して今でもこのお店で働いています。
「今まで店長として働いてきたのだからお金には不自由しないでしょう、
何もこんなアルバイトがするような仕事をしなくても」と僕はビールの
品出しをしている彼に言いました。
すると彼は、「ここが私の唯一の居場所なんだよ」と情けなさそうでした。
僕は、彼が店長時代から仲が良く、彼のことはよく知っています。
でもどうしてここが彼の唯一の居場所なのか理由を聞きました。
すると彼は、お昼の休憩時間に、ゆっくりと僕に話してくれました。
彼は若い頃、今の奥さんと熱烈な恋愛をして、親からの反対も聞き入れず
結婚をしたようです。
彼の母親は、勝ち気で身勝手な彼女を、息子の嫁にはふさわしくないと
思っていたようです。
結婚当初はふたりはラブラブで、世界はふたりのためにある、そんな毎日
だったそうです。
彼は奥さんの誕生日や結婚記念日には必ず何かをプレゼントしたそうです。
彼はその時の奥さんの喜ぶ顔を見ると、とても幸せに感じ、この人と
結婚して本当によかったと思ったそうです。
やがて子供ができ、奥さんは赤ちゃんのお世話で大変になり、彼の家庭は
彼よりも子供中心の生活になったようです。
そのうち彼は、仕事の責任がだんだん重くなり、家庭よりも仕事が
中心の生活になったそうです。
やがてふたりは新婚当時の熱が冷め、家庭をかえりみず必死で働く夫と
亭主元気で留守がいいと思う奥さんになったようです。
彼が店長として朝から晩まで働いていた時はよかったのですが、
再雇用された時から勤務時間が短くなり休みの日も増えたので、
いつもいなかった彼の存在を奥さんは鬱陶しく感じるようでした。
彼女から出る言葉は、「ちゃんとしてよ、だらしない」「も~、イライラする」
「いい加減にしなさい、何度言ったらわかるの」「私に構わないで」
「気に入らないなら、出ていって」と散々だそうです。
彼が奥さんに言い返すと大変、2倍になって返ってくるそうです。
彼は家にいるときは憂鬱で、憂鬱で仕方がないようです。
なので、このお店で働くことで奥さんから逃れられる平和な時間を
持つことができるそうです。
結婚当初のふたりの愛はどこへ行ったのでしょう。
僕は彼の話を聞いて、僕の奥さんを今大切にしないと、将来大変なことに
なると思いました。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。