幸せの味

 

おはようございます。

 

このところ毎月のように物の値段が上がっていますね。

 

スーパーで働く僕は、お客さんの気持ちが痛いほどよくわかります。

 

僕も、同じ物価高に悩む消費者のひとりだからです。

 

お肉売場でお客さんの買い物を見ていてもよくわかります。

 

お肉を選ぶにしても、何を買うのかは決まっているようですが、

 

その量を決めかねているようです。

 

予算内でやり繰りするためには、すこし少なめのパックを

 

選ばざるを得ないようです。

 

それと、夕方になるとお肉の値引きをするのですが、

 

少しでも安く買いたいのでしょうね、以前よりも値引きしたお肉が

 

よく売れるような気がします。

 

でもそんなお客さんばかりではありません。

 

和牛のステーキやすき焼き肉を買うお客さんもいるのです。

 

僕が売場で品出しをしていると、声をかけるお客さんがいました。

 

お肉の値段も上がっているにもかかわらず、「和牛のヒレ肉のいいところを

 

1kg欲しいのですが」と慣れた口調で僕に注文します。

 

このお客さんは月に1、2回いつも和牛ヒレ肉を買ってくれます。

 

僕は急いで冷蔵庫の中から和牛のヒレ肉を取り出し、ステーキ用に切って

 

お客さんに笑顔で渡しました。

 

お客さんは「ヒレ肉は柔らかくて最高だね」と僕に同意を求めました。

 

僕は「そうなんですよ、おいしいですよ」とごまかしました。

 

実は精肉部門で働いているのに、僕はこんな高いお肉は食べたことがないんです。

 

スーパーの給料って高くないんです。

 

お客さんに少しでもいいものを安く買ってもらうのに、社員がたくさん

 

給料をもらう訳にはいかない、と僕は納得しています。(涙)

 

僕は、そのお客さんが値段を気にしないで買い物かごにポンポンと

 

商品を入れる姿を見て、お金持ちっていいなと思いました。

 

そしてきっと、和牛ヒレ肉は幸せの味がするんだろうなと僕は思いました。

 

その日の僕の家の夕食は、豚のこま切れ肉で作った回鍋肉でした。

 

給料の安い僕は、子供たちに美味しいお肉を食べさせてあげられない

 

ことが申し訳ないと思いました。

 

でも僕の奥さんは、安いお肉を使っても、心を込めて作ります。

 

出来立てのアツアツの回鍋肉は心まで熱くなりそうでした。

 

うちの子は「このお肉は美味しいよ、お父さんも食べてごらん」と

 

笑顔で僕に勧めました。

 

口いっぱいに頬張る娘の姿は無邪気で、あっという間に残さず食べてしまい、

 

「お母さん、美味しかったからまた今度作ってね」とお願いしました。

 

僕はそれを聞いて、和牛ヒレ肉の味を知らなくても小さな幸せは

 

身近にあるのだと気付きました。

 

真心を込めて作った奥さんの回鍋肉を感謝して食べる娘を見るだけで、

 

僕は幸せな気持ちになります。

 

これこそ幸せの味だと思いました。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。