人生の先送り

 

僕の親戚のおじさんは60歳で定年退職して、今は家でブラブラしています。

 

仕事を辞めてから2年くらいは旅行に行ったり、趣味の美術館巡りなどを

 

していたようです。

 

その頃僕と会ったおじさんは、楽しそうにその話をしてくれました。

 

僕は自由気ままな毎日を過ごすおじさんが羨ましくて仕方がありませんでした。

 

僕はと言えば、毎日の仕事が忙しくて精神的にも肉体的にも疲れ切っていて、

 

なかなか自分の思うように時間が使えません。

 

これから先の人生のことを思うと、まったく心に余裕がありません。

 

みなさんもそうでしょう、生きていくためには自分のしたいことを

 

犠牲にしても、嫌な仕事をしなければならないこともありますね。

 

ところが最近、そのおじさんと会って話を聞いたところ、時間があり過ぎて

 

持て余しているそうです。

 

仕事をしていた現役時代には、定年退職して時間が取れるようになれば

 

思う存分人生を楽しめると思ったそうです。

 

なので、その頃は自分のやりたいことは我慢し、まずは仕事を優先して、

 

旅行をするために長い連休を取ることなどはほとんどなかったそうです。

 

おじさんは典型的な仕事人間だったようです。

 

仕事だけに専念していれば時間の使い方など考える必要がなかったようです。

 

今では有り余る自分の時間の使い方は、自分で考えなくてはなりません。

 

毎日、旅行や美術館巡りはできません、何もしないと余計なことを考えて

 

しまい不安で憂鬱になるそうです。

 

でも今日すべきことがわかりません、別に明日でも明後日でもいいことばかり。

 

今は何もすることがなく、気持ちに張り合いがないのか、毎日食べる

 

ご飯がまったく美味しく感じないそうです。

 

現役時代は仕事が終わった解放感の中、今日も頑張ったと自分をほめながら、

 

お風呂上がりの一杯のビールと夕飯はとても美味しかったそうです。

 

おじさんは僕に言いました。

 

「例え仕事が忙しくても、仕事一辺倒ではダメ、仕事の中にも遊び心を持って、

 

充実した人生を送れるように時間の使い方を考えなさい。

 

そうすれば、現役の間に、仕事を辞めた後の時間の使い方がわかるから。

 

そうしないと現役も辛いし、余生もつらいよ」と苦笑いをしました。

 

おじさんは、現役中に自分で時間を作って長期休暇を取っていた同僚の、

 

退職後の生き生きとした人生が羨ましいそうです。

 

今ではおじさんは、毎日パチンコ屋に行って、大当たりのときの感激くらいしか

 

刺激はないそうです。

 

僕はおじさんからいいことを聞きました。

 

人生とは、今を楽しみ大切にしないと、後では取り返しがつかなくなるんですね。