僕がスーパーで買い物をしているとき、クルマ型カートに乗った3,4歳
くらいの子供が、僕とすれ違いざまにバイバイと手を振りました。
その子は僕の目を見て、一生懸命に手を振っていました。
そんな無邪気な子供を無視するわけにはいきません。
僕は恥ずかしいので、周りの目を気にしながら遠慮がちに、その子の目を見て
笑顔で小刻みに手を振りました。
僕がそうしたのでその子の母親は、笑顔で手を振る僕を見て、自分のことの
ように嬉しそうでした。
僕が手を振った後も、他のお客にもバイバイと言って手を振っていました。
そのとき僕は、誰とでも愛嬌を振りまく純真な子供はいいなと思いました。
僕の職場にはとても仲が悪いふたりの女性がいます。
ひとりは30代で、旦那と性格が合わなくて離婚した子供のいない女性です。
もう一人は50代で、脳梗塞で半身不随となった旦那を、旦那の母親に面倒を
押し付け別居し、ふたりの子供を育て上げた苦労人です。
若い方の女性は、年上の女性を、病気の旦那を捨てた非情な人だと言い、
他方は、年下の女性を、少し美人で男性からちやほやされた、苦労知らずの
わがままな人間だと言っています。
ふたりとも気が強く、会う度に職場でいつも喧嘩をしています。
でも、僕に対してはふたりとも仲良く接してくれます。
僕はふたりから相手の悪口ばかり聞かされます。
話を聞いても別にどちらかが悪いというわけではありません。
僕は両者のいいところを取り上げて話すようにしています。
でもお互いは聞く耳をもちません。
そのとき僕は先ほどの無邪気な子供のことを思い出しました。
このふたりもきっと子供の頃は、誰にでも愛嬌を振りまく、可愛い子
だったはずだと思いました。
僕はこのふたりを見て、人が生きていくためにはたくさんの障害物があり
それを乗り越える度に人生観が違ってきたのだと思いました。
僕はこのふたりが仲良くなるには、たとえ人生観が違っても、
相手を気遣う愛が必要だと思いました。
でもよく考えると、このふたり、嘘とお世辞だらけの今の世の中で
自分の気持ちを隠さず相手に伝える、姉妹のようにも思えます。
僕は温かい気持ちでふたりの姉妹喧嘩を見守ることにしました。