たい焼きの味

 

僕は仕事の休みの日に、近くのコンビニにお弁当を買いに行きました。

 

お弁当を買って家に向かって歩いていると、後ろから、「ゆうすけさん、

 

あなたはゆうすけさんでしょう、こっちを振り向いて」と呼び止められました。

 

僕の名前はゆうすけではありません、振り向くとお婆さんが、泣きそうな

 

顔をして僕を見つめていました。

 

そして僕がゆうすけさんではないのに気付き、「ごめんなさい、あなたが

 

ひと月前に交通事故でなくなった、孫のゆうすけにそっくりなんです」と

 

言って涙を拭きました。

 

お婆さんの表情には大切な孫をなくした悲壮感が漂っていました。

 

それを感じた僕はお婆さんに、お孫さんはどんな人だったのかと聞いてみました。

 

「ゆうすけは誰にもやさしく真面目で、私ととても仲が良かったのよ、

 

亡くなる少し前には、私を温泉旅行に連れて行ってくれたのよ、

 

とても嬉しくて忘れることができないの。

 

いつもゆうすけは私に甘くて温かいたい焼きを買ってきて、ふたりで

 

食べた思い出は今でも忘れられないのよ」、そう言いながらもお婆さんは

 

涙が止まりませんでした。

 

僕も悲しくなり、涙が出ました。

 

そして今、生きていたお孫さんのことを思い出しながら、ひとりで

 

たい焼きを食べても悲しくてちっとも美味しくないそうです。

 

僕はどんな言葉をかけたらいいのかわかりませんでした。

 

そのとき僕は、最近読んだブログのことを思い出しました。

 

(人は誰でもいつかは死ぬもの、でもあなたは人を深く愛しなさい、

 

そうすればきっと、あなたはその愛した人の心の中でいつまでも生き続けられるから)

 

僕はこれを読んで深く感動しました、死んでも愛は残るんですね。

 

僕はお婆さんにそのことを話しました。

 

そして、「お婆さん、あなたは僕を見てお孫さんと思ったのでしょう。

 

でも違う、あなたを愛したお孫さんはあなたの心の中にいるんですよ。

 

お孫さんに深く愛されたあなたは、いつまでもお孫さんを忘れられないでしょう、

 

お孫さんはあなたの心の中で幸せに生きているんですよ」と慰めました。

 

するとお婆さんは、ブログを読んだ僕と同じように感動してくれました。

 

そして「ありがとう」と言って僕の手をやさしく握りました。

 

僕はそのとき、これからお婆さんが食べるたい焼きはひとりじゃない、

 

ふたりで食べる甘くて温かい味がするだろうと思いました。

 

「それじゃお元気でね」と言って僕はお婆さんと別れました。

 

そのとき僕は、少しはいいことをしたのかなと思いました。

 

ブログって、人から人へと心が伝わるということがわかりました。

 

ますます僕はブログが好きになりました。

 

身も心も寒いあなた、今日はアツアツのたい焼きはいかがです