愛情の入ったアツアツのすき焼き

 

おはようございます。

 

先日僕のお店で、万引きをした子をパートさんが見つけて捕まえました。

 

本当はお店の従業員が捕まえてはいけないことになっています。

 

もし、間違っていれば大変なことになるので、万引きGメンに知らせて

 

捕まえてもらうのです。

 

その時は、買い物かごではなく大きな手提げ袋を持った子が、ひとりで

 

店内を歩いていたそうです。

 

不審に思って見ていると、その子は、大きな牛肉のパックを袋にさっと入れ

 

お勘定をしないでお店の外に出たので声をかけたところ、万引きを認めたようです。

 

捕まえたのは小学校3年生の男の子でした。

 

その時は店長がお休みで、副店長と僕が対応しました。

 

その男の子に、なぜお肉を万引きしたのか聞いてみました。

 

その子の家庭は母子家庭で、学校から帰っても母親は働いていて

 

いつも一人ぼっちのようでした。

 

母親が家に帰っても、いつも忙しそうで、ちっともその子のことを

 

構ってくれないそうです。

 

そんな家庭ですが、母親が仕事のお休みの日にすき焼きを作ってくれた

 

ことがあるそうです。

 

貧しくて牛肉の入ったすき焼きを食べるのは久しぶりだったそうです。

 

母親が美味しそうにすき焼きを食べながら、ゆっくりとその子に話しかけて

 

くれたのがとても幸せに感じたそうです。

 

なのでお肉を持って帰れば母親が喜んでくれると思ったようです。

 

「お肉を持って帰っても、お母さんは、これはどうしたのかと心配する

 

でしょう」と僕は男の子に言いました。

 

するとその子は、「ちっとも僕に構ってくれないお母さんに叱って

 

もらいたいの」と涙を流しました。

 

副店長はお母さんに連絡して引き取りに来てもらうつもりでしたが、

 

僕は副店長に、「絶対許せないので警察を呼びましょう」と警察に電話しました。

 

警察が来て事情を聴いているとしばらくして男の子の母親がお店に来ました。

 

母親は息子の万引きが信じられないようで、事実を聞いて

 

「あなたはこんなことをする子ではないと思っていたのに」と涙を流しました。

 

その子は母親の涙を見て、とても悪いことをしてしまったと気付き、泣き崩れました。

 

その後母親は、息子の万引きを謝り代金を支払い、牛肉を買い上げました。

 

副店長と僕は男の子に、「2度とこんなことはしてはいけないよ」と言って

 

許してあげました。

 

それから数日後のことです。

 

僕が夕方お店で商品出しをしている時、例の男の子が来て、

 

「おじさん、この前はごめんなさい」と僕の目を見て謝りました。

 

僕は驚きました、この子は本当はいい子なんでしょう、きっと母親に

 

言われて謝りに来たと思いました。

 

僕は帰って行く男の子の姿を見送りながら、きっとあの日ふたりで食べた

 

すき焼きは、しょっぱいながらも母親の愛情がたっぷり入ったアツアツの

 

すき焼きだったと思います。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。